2014年3月15日土曜日

嘘つきは、迷惑

信頼と科学

STAP細胞。あの発見が本当なら、とてつもなく素晴らしい発見だった。
再生医療を10年も20年も手前に引き寄せる、すごく画期的な発見。
細胞の分化について、われわれの知識と理解を根底から書き換えるような発見。

もちろん、発見には「慌てものの間違い」がつきものです。
ミスだってある。
私も、Natureにアクセプトされた論文を、間際で撤回したことがあります。
あんときゃ、たいへんだった。(けど、気付いてよかった)。

私達は、間違えることはあるという前提でものを考えています。
論文のレフェリーするときもそう。
どのくらい綿密にやってるかなとか、いろいろ考えながら読みます。
でも、基本には性善説があると思う。
だって、プロに本気で嘘をつかれたら、見抜けないですよ。
画像だって、使いまわさなくていいくらい、
何百から何千くらいのストックは普通にもってるよ。プロなら。

STAP細胞の件、とくに理研が用意してくれた解説のページも秀逸で、
私は100%信じてました。あれは、東北大の出澤先生のMuse細胞の
上位概念なんじゃないかと理解していた。
山中先生のiPS細胞も素晴らしい成果だけど、
これら「非組換」な幹細胞を、
ふたりの日本人の女性研究者がそれぞれ独立に発見したことは、
世界に誇るべき痛快事だと思ってた。
講義でも、今年はこんな素晴らしい発見があったんですよって解説した。
写真の取り違えの話がでたときも、ああまあNatureは急がせるしなあ、
慌てて間違えたのかなあとか、のんきにおもってた。

そりゃないよ、Oさん。
騙された私がバカだったんだけどさ。

このひと、嘘を突き通すだけのスキルも持っていない、いわば素人でした。
なんでそんな素人の嘘が理研もNatureも通過したんだろ?
理研のサイエンス・ライター、いまごろ悔しがってるだろうな。
わかりやすい、良い記事だったんだけど、このひとも性善説で動いていたんだよな。

科学は、とても複雑で大きな対象を、
大勢の人々が少しずつ調べて、その成果を合算して全体をみる、
というスキームで動いています。
分担することもあれば、競争することもある。
でも基本は、みんなが持ち寄ることです。
そのなかにスカが混じってると困るから、正しいかどうかをお互いに検証します。

Oさん、その仕組を理解してなかったみたい。
嘘なんて、いずればれるのに。

なんにしても、信頼がないとダメな業界ではあります。
共著者のV氏、聞いたことある名前だけど誰だったかなあ?っておもってた。
ここで、なんでミミネズミのことを思い出せなかったかなあ。俺のバカ。
これは、ヒトの耳のような構造物を背負ったヌードマウスで、
技術的にはぜんぜん意味がない、
けど「ヒトの遺伝子で作らせたのか?」「生命の冒涜だ」とか
一瞬で思わせちゃうくらい、インパクトだけは強烈なシロモノなんですよ。
まじめにバイテクを研究している人たちの足を、
このマウスがどれだけ引っ張ったか。
あいつだ、このVは。何でいままで生き残っていた?

嘘をつく人、ほんとうに迷惑
モーセの10戒にもあるし、仏教にも不妄語戒ってあるし、
イスラムにもバハイにも、嘘はダメって戒律がある。ほんと、やめてほしい。

新学期になったら、学生たちに謝らなきゃ。

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